サイコネフロロジーとは
慢性腎不全患者さんや透析患者さんの多くは、抑うつ・不安・不眠症など、さまざまなこころの問題を抱えています。これらを学問的に体系化したものが「サイコネフロロジー」であり、米国では1970年ごろから概念が形成され、本邦では1990年に「日本サイコネフロロジー研究会」が設立されたことが始まりとされています。
代表的な症状は抑うつ、不安、睡眠障害であり、その他にも性的機能障害や痛みがしばしばみられます。DSM-IVの診断基準(精神科における診断指標)を用いた調査によると、血液透析患者の大うつ病性障害の有病率は約10%、他のうつ病性障害を含めると20~30%に達するとの報告(Cukor D et al., 2006)があり、臨床医の予想以上に多くの患者がこころの問題を抱えているといえるでしょう(最大で50%とする報告もあります)。
透析患者さんにとっては、週3回の通院、穿刺時の痛み、血圧低下や痒みによる不快感、厳しい水分・食事制限、透析と仕事の両立、社会的孤立、水分制限による外観の変化、死への恐怖など、心理的・社会的負担は枚挙にいとまがありません。
また、慢性腎不全患者さんにおいても、「将来透析になるかもしれない」という不安、水分・食事制限、仕事の継続への懸念、糖尿病による性機能障害などが大きな心理的負担となります。
これは透析医療における重要な課題と最近考えられています。しかし身体的な不調とは異なり、多くの透析医療機関では患者さんの内面まで十分にケアできていないのが現状です。実際には、多くの患者が共感的傾聴のみならず、心理療法や薬物療法を必要としていると考えています。
当院・当法人は、「ファミリア(クリニック名)=家族」、「アイデアル(法人名)=理想的な」を理念として、今後サイコネフロロジー分野に注力してまいります。
参考文献
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サイコネフロロジー診療ガイド(MCメディカ出版)
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サイコネフロロジー・エッセンシャル(メディカルビュー社)